重度の歯周病とは?症状・治療法・治療費まで徹底解説

歯周病は、日本人が歯を失う最大の原因とされています。 その中でも「重度の歯周病」は、進行が進んだ最終段階であり、放置すると歯を支える骨が大きく失われ、最終的には歯が抜け落ちてしまいます。 本記事では、重度の歯周病の具体的な状態から、症状、全身への影響、治療法、治療費の目安までを専門的な視点でわかりやすくお伝えします。 ぜひ、正しい知識を得て、今からでも歯を守る一歩を踏み出しましょう。

重度の歯周病とはどのような状態か

重度の歯周病とは、歯ぐきだけでなく歯を支える骨まで大きく破壊され、歯の動揺が顕著になる最終段階のことです。 一度失われた骨は自然には元に戻らず、治療には専門的な外科処置が必要となります。 

重度の歯周病の進行度と特徴

歯周病は初期の歯肉炎から始まり、中度、そして重度へと段階的に進行します。

重度に進行すると、歯周ポケットと呼ばれる歯と歯ぐきの隙間が深くなり、8mm以上になることも珍しくありません。

そこに歯垢や歯石が溜まり、歯ぐきの腫れや出血が続き、最終的には歯を支える骨が半分以上溶けてしまいます。

この状態になると、歯を指で揺らすと動いてしまい、硬い物を噛むと痛みを伴うのが特徴です。

中度との違いと手遅れのサイン

中度の歯周病では、骨の吸収はあるものの、まだ歯の固定力が保たれている場合が多いです。

しかし重度になると、固定力が大きく低下し、噛む力を受け止められなくなります。

歯磨き時や食事中に歯がぐらついて違和感を覚えるようになったら、すでに重度へと進行している可能性があります。

さらに、歯が長く見えるのもサインの一つで、これは歯ぐきが下がり、根が露出してしまっている証拠です。

こうした状態を放置すると、抜歯を余儀なくされることが多くなります。

20代・40代でも起こる重度の歯周病

歯周病は高齢者だけの病気ではありません。

実際に、20代や30代でも歯周病が進行し、若くして重度になるケースは決して珍しくありません。

若年性歯周炎と呼ばれるものは、遺伝的要素が強く、若くても骨の吸収が急速に進むことが特徴です。

また、40代では仕事の忙しさなどで歯科検診を後回しにしがちで、気づかないうちに重症化するパターンが目立ちます。

早期発見・早期治療が何より大切ですので、年齢に関係なく、異変を感じたらすぐに専門医に相談しましょう。

重度の歯周病の症状と影響

重度の歯周病には、日常生活に大きな支障をきたす症状が多く見られます。 また、口腔内にとどまらず全身の健康にも深い関わりがあります。 

歯のぐらつき・口臭・出血などの典型症状

重度の歯周病では、歯ぐきが腫れて赤黒く変色し、歯を指で軽く触れただけでも動くほど固定力が低下します。

歯ぐきからの慢性的な出血も起こりやすく、口の中には独特の強い口臭が漂います。

この臭いは、ポケット内部で増殖した細菌と膿が原因です。

さらに、硬い食べ物を噛むと痛みを感じ、最終的には噛む力をかばって柔らかい物ばかり食べるようになる人も少なくありません。

これらの症状は歯周病が進行した明確なサインです。

全身への影響|早産や心臓病との関係

近年の研究で、歯周病菌が血管に入り込むことで、心臓病や糖尿病、脳梗塞などのリスクを高めることがわかっています。

特に妊娠中の女性では、歯周病が進行していると早産や低体重児出産の確率が高まるとされています。

これは、歯周病によって発生する炎症物質が血流に乗り、子宮収縮を引き起こすためです。

口腔内の問題が全身疾患の引き金になることを理解し、症状を軽視しないことが非常に重要です。

犬・猫などペットの重度歯周病も知っておこう

重度の歯周病は人間だけの問題ではありません。 犬や猫などのペットも、適切な口腔ケアを怠ると歯周病にかかります。

犬の場合、3歳以上の約8割が歯周病を患っているとされ、放置すると顎の骨が溶けて食事が困難になります。 ペットの場合も、口臭や歯ぐきの腫れ、歯のぐらつきが主な症状です。

飼い主としては、定期的な歯磨きや動物病院でのデンタルケアを徹底することが、ペットの健康寿命を延ばす鍵となります。

重度の歯周病は治る?治療可能かの判断基準

一度進行した重度の歯周病でも、適切な治療を行えば症状をコントロールし、歯を残せる場合もあります。 ただし、骨の吸収度合いや歯の動揺の程度によっては、抜歯が避けられないこともあります。 

どの程度までなら治療で残せるか

一般的に、歯周ポケットが8mm以上で歯の動揺度が高度の場合、歯を残すのは難しいとされています。 

しかし、すべての歯が同じ状態とは限らず、一部の歯だけが重度であれば、その歯を抜歯し、他の歯を保存する方針がとられることが多いです。

 また、残せるかどうかの判断はCT撮影や歯周組織の精密検査によって決まるため、自己判断せずに専門医の診断を受けることが大切です。

重度の歯周病を治す治療法

重度の歯周病では、通常の歯石除去だけでは症状の改善は難しいため、外科的な治療が必要になることが多いです。

 代表的なのがフラップ手術です。 これは、歯ぐきを切開して深いポケット内部の歯石や感染組織を直接除去し、清掃できる状態にする方法です。

 また、失われた骨を再生させるために、GTR法(組織再生誘導法)やエムドゲイン療法などの再生療法が行われることもあります。 

これらの治療は高い技術が必要で、術後のメンテナンスを徹底しなければ再発する可能性も高いので、患者自身のセルフケアと定期通院が欠かせません。 

こうした外科的治療を受けることで、進行を食い止めて歯を保存できる可能性があります。

治らない場合の抜歯と入れ歯・インプラント選択

もし重度の歯周病が進行しすぎていて、外科治療でも保存が難しい場合は、残念ながら抜歯が選択されます。

 抜歯をした後、失った歯を補う方法としては、部分入れ歯、ブリッジ、インプラントの3つが代表的です。 部分入れ歯は比較的低コストで作成できますが、

噛む力が弱く違和感を覚える人もいます。 ブリッジは隣の歯を支えにして固定するため、両隣の健康な歯を削る必要があり、負担がかかるデメリットがあります。

 一方で、インプラントは人工の歯根を骨に埋め込むため、自分の歯のように強い噛む力を取り戻せますが、治療費は高額になりやすく、骨の状態によっては追加の骨造成が必要です。 

どの方法が自分に最適かは、口腔内の状態と生活スタイル、費用面を含めて歯科医とじっくり相談して決めましょう。

重度の歯周病の治療の流れと治療費

重度の歯周病の治療は、初期段階の基本治療から外科的な処置、さらには再生療法まで段階的に進められます。 

各ステップにかかる費用や保険適用の可否も知っておくことで、治療計画が立てやすくなります。

初期治療・歯周外科治療・再生療法の内容

治療の第一歩は、歯石除去やプラークコントロールなどの初期治療です。 これは歯周病の原因となる細菌を徹底的に取り除き、歯ぐきの炎症を抑えるための基礎です。

 重度の場合はこれだけでは不十分なため、次の段階としてフラップ手術が行われます。 

フラップ手術では、麻酔をして歯ぐきを切開し、深い歯周ポケットの奥に溜まった歯石や感染組織を直接除去します。 

さらに、骨の再生が期待できる場合は、GTR法やエムドゲインなどの再生療法が適用されます。 

これにより、失われた骨や歯周組織の一部を再生させ、歯の固定力を取り戻すことを目指します。

治療費の目安と保険適用のポイント

初期治療は健康保険が適用されるため、数千円から一万円程度で済むことがほとんどです。

 しかし、フラップ手術も保険が効く範囲内で行えますが、再生療法になると自費診療となることが一般的です。 

エムドゲインやGTR法は1歯あたり5万円から10万円程度かかります。

 インプラントに移行する場合は、1本あたり30万円から50万円ほどが相場です。 治療費を抑えるためには、できるだけ早期に治療を開始することが重要です。

治療後のメンテナンス費用と通院頻度

治療が完了した後も、定期的なメンテナンスを続けなければ再発のリスクは非常に高くなります。 

メンテナンスは一般的に3ヶ月に1回が目安で、1回あたりの費用は3,000円から5,000円程度です。

 内容としては、歯石除去、ポケットの深さのチェック、クリーニングなどが行われます。 

この習慣を怠ると、せっかくの治療効果が台無しになってしまうため、半永久的に続ける覚悟が必要です。

重度の歯周病に適した歯磨き粉とセルフケア

治療だけでなく、日常のセルフケアも重度の歯周病を抑えるカギです。 効果的な歯磨き粉や正しいブラッシング方法を知り、進行を防ぎましょう。

おすすめの歯磨き粉成分と選び方

重度の歯周病には、抗炎症作用や殺菌効果が期待できる成分を含んだ歯磨き粉がおすすめです。 

例えば、トラネキサム酸、塩化セチルピリジニウム、クロルヘキシジンなどが代表的です。 

研磨剤が少ないものを選ぶことで、露出した歯根に負担をかけにくくなります。

 また、薬用成分がしっかり届くように、低発泡性のものを選ぶのがポイントです。

効果的なブラッシング方法

ブラッシングは力を入れすぎないことが大切です。 

ペングリップで歯ブラシを持ち、毛先を歯と歯ぐきの境目に45度の角度で当て、小刻みに動かして磨きます。 

一度にすべての歯を磨こうとせず、ブロックごとに順序立てて磨くと磨き残しが減ります。

 デンタルフロスや歯間ブラシも必ず併用しましょう。

口臭予防・進行防止のセルフケア習慣

歯周病による口臭を防ぐには、口腔内の清掃だけでなく、舌苔の除去も有効です。 

舌ブラシで舌の表面を優しくこすり、細菌を減らします。 

また、喫煙は歯周病を悪化させるため、禁煙は必須です。 

食後のうがいも忘れずに行い、できるだけプラークが溜まらない環境を保ちましょう。

重度の歯周病に関するよくある質問と誤解

Woman showing inflamed gum on grey background, closeup

重度の歯周病については、患者さんから多くの質問が寄せられます。 

正しい知識を持つことで、無用な不安を減らし、後悔のない治療選択ができるようになります。 

「重度の歯周病は絶対治らない?」の真実

「重度の歯周病はもう手遅れだ」と考える方が多いですが、必ずしもそうとは限りません。 

確かに失われた骨は自然には戻りませんが、外科治療や再生療法によって進行を止めたり、一部を再生させることは可能です。 

ただし、進行度によっては抜歯が避けられない歯もあります。 その場合でも、他の歯を守るために早期に治療を始める価値は大きいのです。

インプラントや入れ歯への移行のタイミング

どのタイミングでインプラントや入れ歯に移行するべきかは、残存歯の状態によって異なります。 

目安として、歯の動揺度が大きく、噛む機能が十分に果たせない場合は抜歯と補綴を検討します。

 無理に保存しても、噛めないばかりか他の歯に負担がかかり、口腔内全体の状態を悪化させる可能性が高いです。 信頼できる専門医の診断を受け、無理のない治療計画を立てましょう。

治療中に注意するべき生活習慣

治療中は、歯科医の指示を守りながら生活習慣を見直すことが大切です。 

まず、喫煙は治療効果を著しく低下させるため、必ず禁煙しましょう。 

また、睡眠不足やストレスは免疫力を下げ、炎症を悪化させますので、規則正しい生活を心がけてください。 

硬いものを無理に噛むのも避け、食事は柔らかいものを中心にしつつ、よく噛んでゆっくり食べることを意識しましょう。

まとめ|重度の歯周病を正しく治療して歯を守ろう

重度の歯周病は、決して放置してはいけない深刻な疾患です。 

しかし、専門的な治療と日々の正しいセルフケアを続けることで、進行を食い止め、歯を守ることは可能です。 重要なのは、症状に気づいたらすぐに歯科医院を受診し、信頼できる医師と二人三脚で治療計画を立てることです。

 そして、治療後のメンテナンスを怠らず、生活習慣を見直すことで、同じ問題を繰り返さないようにしましょう。 

自分の歯をできる限り残し、健康な口腔環境を守るために、今日からできることを始めてください。