マウスピース矯正で後悔? 始める前に知りたいリスクと回避法

マウスピース矯正で後悔? 始める前に知りたいリスクと回避法
盛岡市にある歯医者・歯科、高橋衛歯科医院です。

マウスピース矯正は、その手軽さや目立ちにくい見た目から、近年非常に人気が高まっています。しかし、インターネット上では「後悔した」という声も散見され、本当に安全な治療法なのか、自分に合っているのか不安を感じる方も少なくありません。この記事では、マウスピース矯正で後悔する具体的なリスクや、なぜ失敗が起こるのかといった原因を深掘りします。そして、最も重要な「後悔しないための具体的な回避策」までを網羅的に解説し、あなたが安心して理想の口元を手に入れるための知識を提供します。

  1. 「マウスピース矯正は後悔する」って本当?よくある失敗談
  2. マウスピース矯正で後悔につながる10のリスク・デメリット
    1. 【治療中のトラブル】自己管理が結果を左右する
      1. リスク1:1日20時間以上の装着が必須で自己管理が大変
      2. リスク2:食事や歯磨きのたびに着脱が必要
      3. リスク3:虫歯や歯周病のリスクが高まる
      4. リスク4:痛みや違和感、発音のしづらさがある
    2. 【身体・見た目への影響】想定外の変化に注意
      1. リスク5:歯茎が下がる「歯肉退縮」の可能性
      2. リスク6:歯の根が短くなる「歯根吸収」のリスク
      3. リスク7:歯と歯茎の間に隙間「ブラックトライアングル」ができることも
    3. 【治療計画とのズレ】理想の歯並びにならない?
      1. リスク8:すべての歯並びに対応できるわけではない(適応症例)
      2. リスク9:計画通りに歯が動かず治療期間が延びる
      3. リスク10:治療後に歯並びが元に戻る「後戻り」
  3. なぜ後悔するケースが起こるのか?失敗の主な原因
    1. 原因1:歯科医師の診断を介さない格安マウスピース矯正
    2. 原因2:矯正歯科に関する知識・経験が少ない歯科医師による治療
    3. 原因3:精密検査が不十分なまま治療計画を立てている
    4. 原因4:患者自身の自己管理不足(装着時間・口腔ケア)
  4. マウスピース矯正で後悔しないための5つの回避法
    1. 回避法1:信頼できる歯科医院・歯科医師を選ぶ
      1. 矯正治療の経験・症例数が豊富か
      2. 精密検査(レントゲン・CT等)をしっかり行うか
      3. リスクや代替案も正直に説明してくれるか
    2. 回避法2:自分の歯並びが適応症例か正確に診断してもらう
    3. 回避法3:治療中のルール(装着時間・ケア)を徹底する
    4. 回避法4:治療費の総額と追加費用の有無を確認する
    5. 回避法5:治療後の保定装置(リテーナー)の重要性を理解する
  5. リスクだけじゃない!マウスピース矯正のメリットを再確認
    1. メリット1:矯正装置が透明で目立ちにくい
    2. メリット2:食事や歯磨きが普段通りできる
    3. メリット3:ワイヤー矯正に比べて痛みが少ない傾向
    4. メリット4:金属アレルギーの心配がない
  6. マウスピース矯正とワイヤー矯正、どちらを選ぶべき?
    1. マウスピース矯正が向いている人
    2. ワイヤー矯正が向いている人
  7. まとめ:リスクを正しく理解し、信頼できる歯科医院で後悔のないマウスピース矯正を
    1. 監修者

「マウスピース矯正は後悔する」って本当?よくある失敗談

マウスピース矯正は多くのメリットがある一方で、「後悔した」と感じてしまうケースがあるのも事実です。具体的にどのような状況で後悔が生まれるのでしょうか。よくある失敗談として、「期待したほど歯並びが綺麗にならなかった」「当初の費用以外に追加費用がかさんで想定より高額になった」「治療が終わったのに歯並びが元に戻ってしまい、時間もお金も無駄になった気がする」といった声が聞かれます。これらの後悔の背景には、さまざまな原因が潜んでいます。次のセクションでは、このような失敗談がなぜ起こるのかをさらに詳しく掘り下げ、その原因と対策について解説していきます。

マウスピース矯正で後悔につながる10のリスク・デメリット

マウスピース矯正を検討する上で、メリットだけでなく潜在的なリスクやデメリットを正確に理解しておくことは非常に重要です。このセクションでは、治療中に起こりうるトラブルから身体や見た目への影響、そして治療計画とのズレまで、後悔につながりやすい10のリスクを具体的に解説します。これらのリスクを「治療中のトラブル」「身体・見た目への影響」「治療計画とのズレ」という3つのカテゴリーに分けて詳しく見ていきましょう。

【治療中のトラブル】自己管理が結果を左右する

マウスピース矯正は、患者さんご自身の行動や管理が治療の成功を大きく左右する特徴があります。このセクションでは、主に自己管理の不足や誤解から生じやすい治療中のトラブルについて詳しく解説します。これらのリスクは、事前に内容を正確に理解し、適切な対処法を知ることで、ほとんどの場合回避できるものです。治療を始める上で、ご自身のライフスタイルと照らし合わせながら、主体的に取り組む姿勢が非常に重要になります。

リスク1:1日20時間以上の装着が必須で自己管理が大変

マウスピース矯正の成功に不可欠なのが、1日20時間以上のマウスピース装着時間を厳守することです。なぜこの時間が必要なのかというと、マウスピースは歯に継続的な圧力をかけ、少しずつ計画通りに歯を動かすように設計されているからです。装着時間が不足すると、歯が計画通りに動かず、治療期間が長引いたり、最悪の場合、治療計画自体にズレが生じて理想の歯並びにならなかったりする可能性があります。

例えば、広告代理店の営業職としてお忙しい方が、毎日の仕事の会食や友人との外食が多いと、その都度マウスピースを外す手間や、再装着を忘れてしまうことが出てくるかもしれません。また、プライベートの旅行やイベントでも、つい装着時間が短くなってしまうことも考えられます。マウスピース矯正は、ご自身の強い意思と自己管理能力が問われる治療法であることを理解しておく必要があります。

リスク2:食事や歯磨きのたびに着脱が必要

マウスピース矯正では、食事や色の濃い飲み物(コーヒー、紅茶、赤ワインなど)を摂る際には、必ずマウスピースを外す必要があります。また、マウスピースを再装着する前には、虫歯や歯周病のリスクを防ぐために、必ず丁寧に歯磨きをして口腔内を清潔に保つことが推奨されています。

この「着脱と口腔ケア」の手間は、日常生活において想像以上に負担となることがあります。特に、日中の外出先や職場でランチをしたり、休憩時間にコーヒーを飲んだりするたびに、人前でマウスピースを外してケースにしまい、食後にはすぐに歯磨きをするというのは、正直なところ面倒に感じるかもしれません。この手間を怠ってしまうと、後述する虫歯や歯周病のリスクが格段に高まるため、毎日の習慣として徹底できるかどうかが問われます。

リスク3:虫歯や歯周病のリスクが高まる

マウスピースを長時間装着していると、歯が唾液に触れる時間が減少し、唾液による自浄作用が働きにくくなります。その結果、口腔内の細菌が繁殖しやすい環境となり、虫歯菌や歯周病菌が増え、虫歯や歯周病のリスクが高まる可能性があります。

特に注意が必要なのは、マウスピースを装着する前に歯磨きが不十分だったり、糖分を含む飲み物をマウスピースをつけたまま飲んだりするケースです。これにより、歯とマウスピースの間に糖分や汚れが長時間閉じ込められ、細菌が繁殖しやすい温床となってしまいます。もし矯正治療中に虫歯や歯周病が進行してしまうと、治療を一時中断してこれらの病気を治す必要が出てくるため、治療期間が大幅に延長されることにもつながります。したがって、矯正治療中は普段以上に予防的な口腔ケアを徹底することが極めて重要になります。

リスク4:痛みや違和感、発音のしづらさがある

マウスピース矯正を始めたばかりの頃や、新しいマウスピースに交換した直後には、歯が締め付けられるような痛みや、口の中に異物があるような違和感を感じることがあります。これは、歯に力がかかって移動している証拠であり、通常は数日から1週間程度で慣れていく一時的なものです。

また、マウスピースを装着することで、一時的に発音しづらくなることもあります。特に「サ行」や「タ行」など、舌先を使う音で影響が出やすい傾向があります。広告代理店の営業職など、お客様と話す機会の多い方にとっては不安に感じるかもしれませんが、多くの場合、数週間から1ヶ月程度で舌がマウスピースに慣れて自然に発音できるようになります。もし痛みが長引いたり、発音のしづらさが改善されない場合は、遠慮なく歯科医師に相談することが大切です。

【身体・見た目への影響】想定外の変化に注意

このセクションでは、マウスピース矯正によって歯そのものだけでなく、歯茎や歯の根など、身体に起こりうる不可逆的な変化や、審美的な問題について解説します。これらのリスクは、専門的な診断を受けることで事前に予測し、軽減できる場合があります。そのため、治療を開始する前に信頼できる歯科医師による徹底した検査を受けることが極めて重要です。

リスク5:歯茎が下がる「歯肉退縮」の可能性

歯肉退縮とは、歯を支える歯茎が下がってしまい、歯が長く見えたり、歯の根元が露出することで知覚過敏を引き起こしたりする状態を指します。マウスピース矯正によって歯を動かす際に、特に歯並びの凹凸が大きいケースや、もともと歯茎が薄い方は歯肉退縮が起こりやすいとされています。一度下がってしまった歯茎は、残念ながら自然に元の状態に戻ることはほとんどありません。そのため、治療を始める前の精密なリスク評価と、起こりうる可能性についての歯科医師からの十分な説明が非常に重要になります。

リスク6:歯の根が短くなる「歯根吸収」のリスク

歯根吸収とは、矯正治療によって歯に力が加わることで、歯の根の先端部分が溶けて短くなってしまう現象です。過度な矯正力がかかった場合や、歯を大きく移動させる必要がある場合に、このリスクが高まる傾向があります。歯根吸収が進行すると、歯を支える力が弱まり、将来的に歯の寿命に影響を及ぼす可能性もある深刻なリスクです。そのため、矯正治療中はレントゲンなどを用いて定期的に歯根の状態をモニタリングし、異常がないかを注意深く確認することが大切です。

リスク7:歯と歯茎の間に隙間「ブラックトライアングル」ができることも

ブラックトライアングルとは、歯と歯茎の間にできる黒い三角形の隙間のことを指します。これは、重なり合っていた歯が矯正によって綺麗に整列した際に、もともと歯茎が十分に満たされていなかったスペースが見えるようになることで発生します。特に成人矯正で起こりやすく、審美的な問題として気にされる方が多くいらっしゃいます。また、見た目だけでなく、食べ物が詰まりやすくなったり、そこから虫歯や歯周病のリスクが高まったりする可能性もあります。治療を始める前に、ブラックトライアングルが発生する可能性について歯科医師からしっかりと説明を受け、理解しておくことが重要です。

【治療計画とのズレ】理想の歯並びにならない?

このセクションでは、「思った通りに治らなかった」という後悔に直結する、治療計画と実際の結果の間に生じるズレについて解説します。期待通りの結果を得るためには、治療の限界と可能性を事前に正しく理解しておくことが不可欠です。

リスク8:すべての歯並びに対応できるわけではない(適応症例)

マウスピース矯正は万能な治療法ではなく、すべての歯並びに対応できるわけではありません。特に、歯を大きく動かす必要があるケースや、骨格的な問題(重度の出っ歯や受け口など)が原因で歯並びが乱れている場合には、マウスピース矯正だけでは十分な改善が見込めないことがあります。

適応外の症例に対して無理にマウスピース矯正を適用しようとすると、期待通りの結果が得られないだけでなく、かえって問題が悪化してしまうリスクも考えられます。ご自身の歯並びがマウスピース矯正に適応しているかどうかは、レントゲンやCTなどの精密検査に基づいた歯科医師の正確な診断が不可欠です。

リスク9:計画通りに歯が動かず治療期間が延びる

治療を開始する前に作成される3Dシミュレーションは、あくまで治療計画の予測であり、実際の歯の動きには個人差があります。特に、マウスピースの装着時間を守れていなかったり、舌癖(ぜつへき)など歯の動きを阻害する癖があったりすると、計画通りに歯が動かないことがあります。

その結果、当初予定していた治療期間が延長されてしまう可能性があります。期間が延長されると、追加でマウスピースの作成が必要になったり、調整費用が発生したりするケースもあるため、契約前に治療期間が延びた場合の費用についても詳しく確認しておくことが大切です。

リスク10:治療後に歯並びが元に戻る「後戻り」

矯正治療が完了し、理想の歯並びになったとしても、歯は元の位置に戻ろうとする「後戻り」という現象が起こることがあります。これは、歯を取り囲む骨や歯周組織、さらには唇や舌の筋肉のバランスが、新しい歯並びに完全に適応するまでに時間がかかるためです。

後戻りを防ぐためには、治療後の一定期間、保定装置(リテーナー)を装着することが非常に重要です。このリテーナーの装着を怠ってしまうと、せっかく時間と費用をかけて整えた歯並びが崩れてしまい、最大の「後悔」につながるリスクがあります。治療の成功を持続させるためには、リテーナーの指示を必ず守りましょう。

なぜ後悔するケースが起こるのか?失敗の主な原因

マウスピース矯正で「後悔した」と感じる多くの方は、治療に伴うリスクやデメリットを十分に理解していなかったか、あるいは治療が計画通りに進まなかったことが原因です。ここでは、そのような失敗がなぜ起こるのか、その根本的な原因を「クリニック・歯科医師側の問題」と「患者側の問題」に分けて詳しく解説します。これらの原因を正しく理解することで、皆さんがマウスピース矯正で失敗するリスクを避け、理想の歯並びを手に入れるための具体的な行動指針を見つけることができるでしょう。

原因1:歯科医師の診断を介さない格安マウスピース矯正

マウスピース矯正で後悔する大きな原因の一つに、歯科医師による十分な検査や診断を経ずに提供される、安価なマウスピース矯正サービスを選んでしまうケースが挙げられます。歯科矯正は、単に歯をきれいに並べるだけでなく、顎骨の構造や噛み合わせ、歯周組織の状態などを総合的に考慮して行うべき医療行為です。

しかし、歯科医師の診断を介さない格安サービスでは、簡易的な口腔内スキャンや自己申告だけで治療を進めることが多く、歯の根の状態や顎の関節、重度の歯周病の有無といった、目に見えない重要な問題を見落とす危険性があります。これにより、適切な治療が行われず、歯根吸収や顎関節症の悪化といった深刻な健康被害につながる可能性も否定できません。正規の医療機関で提供されるマウスピース矯正が、精密な検査と診断に基づいているのに対し、格安サービスは医学的根拠の薄い画一的なプランで進められることが多く、これが後悔へとつながる大きな違いとなります。

原因2:矯正歯科に関する知識・経験が少ない歯科医師による治療

マウスピース矯正は、どの歯科医師が担当しても同じ結果が得られるわけではありません。矯正治療、特にマウスピース矯正には専門的な知識と豊富な臨床経験が不可欠です。例えば、歯の動きを正確に予測し、トラブルが発生した際に適切に対処するには、高度な専門性が求められます。

しかし、矯正歯科に関する知識や経験が少ない歯科医師が治療計画を立てたり、経過観察を行ったりすると、適応症例の見極めを誤ったり、計画通りに歯が動かないといった問題が生じた際に適切な対応ができないリスクがあります。これにより、治療期間が延長されたり、最終的な仕上がりが期待外れになったりする可能性があります。クリニックを選ぶ際には、担当する歯科医師が矯正治療に関してどのような資格を持っているか、どれくらいの症例経験があるかを確認することが重要ですわれます。

原因3:精密検査が不十分なまま治療計画を立てている

安全で確実なマウスピース矯正を行うためには、事前の精密検査が非常に重要です。レントゲン撮影(特に顎の骨格を詳細に分析できるセファロ)、歯科用CT、口腔内写真、そして精密な歯型の採取といった検査は、患者さん一人ひとりの歯と顎の状態を正確に把握し、無理のない治療計画を立てるために不可欠です。

これらの精密検査を省略してしまうと、歯の根の状態や顎の骨格的な問題、隠れた虫歯や歯周病など、見ただけではわからない深刻な問題を見落としてしまう可能性があります。その結果、歯根吸収や歯肉退縮といったリスクが増大したり、そもそもマウスピース矯正では改善が難しい症例に対して非現実的な治療計画を立ててしまったりすることになります。精密検査は、治療の安全性を確保し、期待通りの結果を得るための土台となるため、これを軽視するクリニックは避けるべきです。

原因4:患者自身の自己管理不足(装着時間・口腔ケア)

マウスピース矯正は、歯科医師の専門的な治療と合わせて、患者さん自身の積極的な協力がなければ成功しません。特に、歯科医師から指示された「1日20時間以上の装着時間」を守ることと、「飲食後の適切な口腔ケア」を徹底することは、治療結果に大きく影響します。

装着時間が不足すると、計画通りに歯が動かず治療期間が大幅に延長したり、最悪の場合、計画の見直しや追加費用が発生したりすることがあります。また、マウスピースを装着したまま糖分を含む飲み物を飲んだり、食後の歯磨きを怠ったりすると、マウスピースと歯の間に細菌が繁殖しやすくなり、虫歯や歯周病のリスクが高まります。これらの自己管理を怠ることは、治療の失敗や後悔に直結するだけでなく、口腔内の健康を損なうことにもつながります。マウスピース矯正は、患者さん自身が治療の主体者であるという意識を持ち、責任感を持って取り組むことが不可欠な治療法なのです。

マウスピース矯正で後悔しないための5つの回避法

ここまでマウスピース矯正に伴うさまざまなリスクや、後悔につながる原因について解説してきました。しかし、これらの情報に不安を感じる必要はありません。リスクを正しく理解し、適切な対策を講じることで、多くの「後悔」は回避できます。このセクションでは、皆さんが安心してマウスピース矯正を選択し、理想の笑顔を手に入れるための具体的な回避策を5つのポイントに分けてご紹介します。クリニック選びから治療中、そして治療後まで、各段階で何をすべきか明確なチェックリストとして活用いただけます。

回避法1:信頼できる歯科医院・歯科医師を選ぶ

マウスピース矯正を成功させ、後悔しないためには、治療のパートナーとなる歯科医院と歯科医師選びが最も重要なステップです。信頼できる歯科医院を選ぶことで、リスクの早期発見や適切な対処、そして何よりも安心して治療を任せられる環境が手に入ります。では、具体的にどのような点に注目して選べば良いのでしょうか。ここでは、その見極め方についてさらに詳しく解説していきます。

矯正治療の経験・症例数が豊富か

歯科医師の専門性を見極める上で、矯正治療に関する経験や症例数は非常に重要な指標となります。例えば、日本矯正歯科学会が認定する「認定医」や「専門医」の資格を持つ歯科医師は、矯正治療に関して高い知識と経験を有していることの証しです。また、マウスピース矯正の年間症例数も確認するべきポイントです。多くの症例を手がけている歯科医師は、さまざまな歯並びのタイプやトラブルに対応してきた経験が豊富であると判断できます。クリニックのウェブサイトで公開されている症例写真や、実際に治療を受けた患者さんの声、治療実績なども参考にしながら、客観的な情報に基づいて経験値を見極めましょう。

精密検査(レントゲン・CT等)をしっかり行うか

安全で確実なマウスピース矯正を行うためには、治療前の精密検査が不可欠です。カウンセリングや契約の前に、どのような精密検査を実施しているのかを必ず確認しましょう。特に、顎の骨格を詳細に評価するためのセファロ(頭部X線規格写真)や、歯の根の状態を三次元的に確認できる歯科用CTを導入しているかどうかは、クリニックが安全性を重視しているかを見極める重要な基準の一つです。これらの検査をしっかりと行うことで、歯根吸収や顎関節症など、目に見えないリスクを事前に把握し、それに基づいた適切な治療計画を立てることが可能になります。

リスクや代替案も正直に説明してくれるか

信頼できる歯科医師は、治療の良い面だけを強調するのではなく、考えられるリスク、デメリット、そして治療の限界についても正直に説明してくれます。例えば、「この歯並びの場合、マウスピース矯正では完全に理想通りにはならない可能性がある」といった具体的な説明があるかどうかがポイントです。また、マウスピース矯正が最適ではないと判断された場合に、ワイヤー矯正など他の選択肢(代替案)も公平に提示してくれるかどうかも重要です。質問に対して丁寧に答えてくれるか、疑問に思ったことを話しやすい雰囲気かどうかなど、コミュニケーションの質も判断材料となります。治療のメリット・デメリットを十分に理解し、納得した上で治療を開始できるクリニックを選びましょう。

回避法2:自分の歯並びが適応症例か正確に診断してもらう

「手軽そうだから」という理由だけで自己判断し、「自分はマウスピース矯正で治せる」と思い込んでしまうのは危険です。必ず精密検査に基づいて、専門家である歯科医師に自分の歯並びがマウスピース矯正の適応症例であるかを正確に診断してもらいましょう。重度の歯並びの乱れや骨格的な問題がある場合、無理にマウスピース矯正を選択すると、治療がうまくいかないばかりか、症状が悪化するリスクもあります。複数のクリニックでカウンセリングを受け、セカンドオピニオンを求めることも、より客観的な診断を得る上で非常に有効な手段です。

回避法3:治療中のルール(装着時間・ケア)を徹底する

マウスピース矯正は、歯科医師だけでなく患者さん自身の協力が不可欠な治療です。治療を開始すると決めたら、歯科医師から指示されたルールを徹底的に守る覚悟が必要になります。特に「1日20時間以上の装着」と「飲食後の丁寧な口腔ケア」は、治療結果を左右する二大要素です。マウスピースの装着時間が不足すると、歯が計画通りに動かず治療期間が延びたり、最終的な仕上がりに影響が出たりする可能性があります。また、口腔ケアを怠れば、虫歯や歯周病のリスクが高まります。治療を成功させるためには、歯科医師任せにせず、自分自身が治療の主体者であるという意識を持ち、毎日の自己管理を徹底しましょう。

回避法4:治療費の総額と追加費用の有無を確認する

金銭面での後悔を避けるためには、契約前に治療費の総額を明確に確認することが非常に重要です。提示された金額が、いわゆる「トータルフィー」と呼ばれる、治療終了までのすべての費用(毎回の調整料、治療期間が延長した場合の追加費用、治療後の保定装置の費用など)が含まれているかどうかを具体的に質問しましょう。もし追加費用が発生する可能性がある場合は、どのようなケースで、いくらくらいかかるのかを詳しく説明してもらうことが大切です。また、支払い方法(一括払い、分割払い、デンタルローンなど)についても、ご自身のライフスタイルに合わせて確認しておくことをお勧めします。

回避法5:治療後の保定装置(リテーナー)の重要性を理解する

矯正治療は歯を動かして終わりではありません。治療が完了し、理想の歯並びになったとしても、歯は元の位置に戻ろうとする「後戻り」という現象が起こります。これを防ぐために、治療後一定期間「保定装置(リテーナー)」を装着することが極めて重要です。リテーナーの装着を怠ると、せっかく整えた歯並びが崩れてしまい、時間とお金をかけた治療が無駄になるという最大の後悔につながりかねません。治療開始前に、リテーナーの種類、装着期間、そして費用についてしっかりと説明を受け、長期的な視点で治療に取り組む必要があることを理解しておきましょう。

リスクだけじゃない!マウスピース矯正のメリットを再確認

ここまでマウスピース矯正に潜むリスクやデメリットについて詳しく解説してきましたが、多くの方がこの治療法を選ぶのには、それだけ魅力的な理由があります。リスクを正しく理解し、それらを回避する方法を知った上でメリットと比較検討することは、ご自身にとって最適な治療法を見つけ、後悔のない選択をするために非常に重要です。このセクションでは、マウスピース矯正が持つ数々のメリットを再確認し、治療に対する前向きな気持ちを持っていただけるような情報をお届けします。

メリット1:矯正装置が透明で目立ちにくい

マウスピース矯正の最大の利点の一つは、矯正装置が透明で非常に薄く作られているため、装着していてもほとんど目立たない点です。従来のワイヤー矯正では、金属製の装置が口元に装着されるため、見た目を気にされる方も少なくありませんでした。しかし、マウスピース矯正であれば、営業職の方や接客業の方など、日々多くの人と対面する機会が多い方でも、見た目を気にすることなく治療を進められます。これにより、仕事やプライベートにおけるコミュニケーションに支障をきたすことなく、自信を持って笑顔を保ちながら歯並びを整えることが可能です。

メリット2:食事や歯磨きが普段通りできる

マウスピース矯正は、食事や歯磨きの際に自分で装置を取り外せるため、日常生活における大きなメリットとなります。ワイヤー矯正では、装置が固定されているため、硬いものや粘着性の高い食べ物を避ける必要があり、食事に制限が生じることがありました。しかし、マウスピース矯正なら、食事の際は装置を外すことで、好きなものを普段通り楽しめます。また、歯磨きの際も装置を外してすみずみまで丁寧に磨けるため、ワイヤー矯正に比べて口腔内を清潔に保ちやすく、虫歯や歯周病のリスクを低減できる点も大きな利点です。

メリット3:ワイヤー矯正に比べて痛みが少ない傾向

一般的に、マウスピース矯正はワイヤー矯正に比べて痛みが少ない傾向にあると言われています。ワイヤー矯正では、装置が口内の粘膜に当たって口内炎ができたり、強い矯正力がかかることで痛みを感じやすかったりすることがあります。一方、マウスピース矯正では、歯を少しずつ段階的に動かしていくため、歯にかかる力が比較的マイルドです。新しいマウスピースに交換した直後には多少の締め付け感や違和感を覚えることがありますが、通常は数日で慣れてくる方がほとんどです。ただし、痛みの感じ方には個人差があるため、過度な期待はせず、もし強い痛みを感じる場合は速やかに歯科医師に相談するようにしましょう。

メリット4:金属アレルギーの心配がない

マウスピース矯正に使用される装置は、医療用プラスチック製であるため、金属アレルギーの心配がないというメリットがあります。従来のワイヤー矯正では、金属製のブラケットやワイヤーを使用するため、金属アレルギーをお持ちの方にとっては治療の選択肢が限られてしまうことがありました。しかし、マウスピース矯正であれば、金属アレルギーの心配をすることなく安心して矯正治療を受けられます。これにより、これまで金属アレルギーのために矯正治療を諦めていた方も、理想の歯並びを目指せるようになります。

マウスピース矯正とワイヤー矯正、どちらを選ぶべき?

マウスピース矯正かワイヤー矯正か、どちらを選ぶべきか悩んでいる方もいらっしゃるでしょう。どちらの矯正方法にもメリットとデメリットがあり、ご自身の歯並びの状態、ライフスタイル、そして治療への期待値によって最適な選択は異なります。このセクションでは、それぞれの矯正方法がどのような方に向いているのかを具体的に比較し、あなたが後悔のない選択をするための判断材料を提供します。まずは、ご自身の状況を振り返りながら、読み進めてみてください。

マウスピース矯正が向いている人

マウスピース矯正は、その特性から特定の方々に特に適しています。以下のような特徴に当てはまる方は、マウスピース矯正を検討する価値が高いと言えるでしょう。

治療中の見た目を重視したい人:透明なマウスピースを使用するため、矯正していることがほとんど気づかれません。人前に出る機会が多い営業職や接客業の方、目立たずに歯並びを整えたいと考えている方に最適です。

自己管理能力が高い人:1日20時間以上の装着時間厳守や、毎日の丁寧な口腔ケアが求められます。ご自身で計画的に取り組める方であれば、スムーズに治療を進めることができます。

比較的軽度から中等度の歯並びの乱れの人:軽度なガタつきやすきっ歯、前歯の傾きなど、歯を大きく動かす必要がない症例において、効率的に治療を進められます。

食事を普段通り楽しみたい人:食事の際はマウスピースを取り外せるため、食べ物の制限がほとんどありません。好きなものを食べたいという方にとって大きなメリットです。

金属アレルギーが心配な人:医療用プラスチックを使用するため、金属アレルギーの心配なく治療を受けられます。

痛みに敏感な人:ワイヤー矯正に比べて一度に加わる力がマイルドなため、痛みが少ない傾向にあります。

ワイヤー矯正が向いている人

一方、ワイヤー矯正はマウスピース矯正では対応が難しい、あるいはワイヤー矯正の方が高い効果を発揮する症例や、特定のライフスタイルの方に向いています。

重度の歯並びの乱れや骨格的な問題がある人:歯を大きく移動させる必要がある症例、抜歯を伴うような複雑なケース、顎の骨格に起因する出っ歯や受け口など、より強力で精密な歯の移動が必要な場合にワイヤー矯正が適しています。

自己管理に自信がない人:装置の着脱の必要がないため、装着時間を守る自己管理が不要です。歯科医師に任せておけば治療が進むという点で、自己管理が苦手な方でも安心して治療を受けられます。

装置の着脱を面倒に感じる人:マウスピースのように食事や歯磨きのたびに装置を外す手間がないため、そうした手間を省きたいと考える方にはワイヤー矯正が適しています。

費用を抑えたい人:一般的にマウスピース矯正よりもワイヤー矯正の方が費用が抑えられる傾向にあるため、費用を重視する方には選択肢となります。ただし、症例によって費用は変動します。

確実な治療効果を求める人:長い歴史と豊富な実績があり、多くの症例に対応できるため、どのような歯並びでも確実に治療したいと考える方にはワイヤー矯正が適しているでしょう。

まとめ:リスクを正しく理解し、信頼できる歯科医院で後悔のないマウスピース矯正を

マウスピース矯正は、その手軽さや見た目の良さから非常に魅力的な治療法です。しかし、この記事で詳しく解説してきたように、後悔につながる可能性のあるリスクやデメリットも存在します。決して安易な選択ではなく、医療行為であることを深く理解することが重要です。

多くのリスクは、信頼できる歯科医師による適切な診断と、患者さんご自身の正しい知識と協力によって回避したり、軽減したりできます。特に、マウスピースの装着時間を守り、丁寧な口腔ケアを行うといった自己管理は、治療の成功に直結します。

リスクを必要以上に恐れて治療に踏み切れないでいる方もいるかもしれません。しかし、リスクを正しく理解し、不明な点は専門家である歯科医師に相談することで、安心して治療を選択できます。複数のクリニックでカウンセリングを受け、ご自身の歯並びに最も適した治療計画と、心から信頼できる歯科医師を見つけることが、理想の笑顔への第一歩となるでしょう。後悔のないマウスピース矯正で、自信を持って輝く未来を手に入れてください。

 

少しでも参考になれば幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございます。

 

監修者

高橋 衛 | Takahashi mamoru
岩手医科大学歯学部卒業後、岩手医科大学歯学部口腔外科第二講座入局し、
医療法人 高橋衛歯科医院設立 理事長就任、MAMO IMPLANT CLINIC MALIOS 開設

 

【所属】
日本歯科医師会
岩手県歯科医師会
盛岡市歯科医師会
歯科医師臨床研修指導歯科医
岩手県保険医協会
日本口腔外科学会
日本口腔インプラント学会
EUROPEAN ASSOCIATION FOR OSSEOINTEGRATION
AMERICAN ACADEMY PERIODONTOLOGY
岩手医科大学歯学会
デンタルコンセプト21  会員
日本歯科東洋医学会
JIADS Club  会員
P.G.I Club 会員
スピード矯正研究会  会員
床矯正研究会 会員
近代口腔科学研究会 会員


【略歴】
岩手医科大学歯学部 卒業
岩手医科大学歯学部口腔外科第二講座 入局
「高橋衛歯科医院」 開業
「MAMO IMPLANT CLINIC MALIOS」 開業

 

岩手県盛岡市の歯医者・歯科
高橋衛歯科医院
住所:岩手県盛岡市北天昌寺町7−10
TEL:019-645-6969