
インビザライン治療を始めてから、「なんとなく口臭が気になる」と感じることはありませんか?人と話す時や、マスクを外す瞬間に口臭が気になって、自信が持てなくなってしまう方も少なくありません。インビザライン矯正中の口臭は、多くの方が経験する悩みの一つです。このガイドでは、インビザライン装着中に口臭が発生する主な原因から、日々の具体的なケア方法、さらにはオフィスや外出先でも実践できる簡単な対策まで、総合的にご紹介します。この記事を読んで、口臭の不安を解消し、自信を持ってインビザライン治療を続けられるよう、今日からできる実践的なケアを始めてみましょう。
インビザライン矯正中に口臭が気になるのはなぜ?主な3つの原因
インビザラインによる歯列矯正を進める中で、「以前よりも口臭が気になる」と感じる方は少なくありません。これは、インビザラインを装着している期間特有の口腔内環境の変化が関係しているためです。口臭の原因はさまざまですが、インビザライン矯正中に口臭が発生しやすくなる主な要因は、「唾液の作用低下」「汚れの付着」「口内トラブル」の3つに大きく分けられます。
これらの原因を詳しく理解することで、適切な対策を講じ、矯正治療中の口臭の悩みを解消することができます。次のセクションでは、それぞれの原因について詳しく見ていきましょう。
原因1:唾液の働きが弱まり、細菌が繁殖しやすくなる
私たちの口の中には、唾液という非常に重要な液体があります。唾液には、食べかすを洗い流す「自浄作用」や、細菌の増殖を抑える「抗菌作用」があり、これらが口内環境を清潔に保ち、口臭の発生を防ぐ役割を担っています。唾液はまさに、口の中の天然の洗浄液と言えるでしょう。
しかし、インビザラインを装着すると、歯の表面がアライナーで覆われるため、唾液が歯に直接触れにくくなります。これにより、唾液の自浄作用や抗菌作用が十分に機能しなくなり、口腔内が乾燥しやすくなります。口の中が乾燥すると、口臭の原因となる細菌が繁殖しやすい環境が作られてしまい、結果として口臭が強くなることがあります。
原因2:マウスピース(アライナー)や歯に残った汚れ
インビザライン矯正中に口臭が発生するもう一つの大きな原因は、マウスピースであるアライナーや歯に付着した汚れです。特に、食後に歯磨きをせずにアライナーを装着してしまうと、歯とアライナーの間に食べかすが挟まったままの状態になります。
この食べかすは、口の中にいる細菌にとって格好の栄養源となり、時間とともに腐敗して不快な臭いを発するようになります。また、アライナー自体の洗浄が不十分だと、プラーク(歯垢)が付着したり、洗浄時にブラシなどでアライナーに微細な傷がついたりすることがあります。このような傷やプラークの溝に汚れが溜まると、そこが細菌の温床となり、口臭を発生させてしまうのです。
原因3:虫歯や歯周病など口の中のトラブル
インビザライン矯正中の口臭は、必ずしも矯正治療そのものだけが原因とは限りません。実は、矯正治療を開始する前から存在していた虫歯や歯周病といった口腔内のトラブルが、口臭を悪化させている可能性も考えられます。
アライナーを装着することで、虫歯の穴や歯周病で炎症を起こしている歯茎などが密閉された状態になり、酸素を嫌う嫌気性菌(口臭の主な原因菌)がさらに活発に活動しやすくなることがあります。これにより、元々あった口臭がインビザライン矯正中にさらに強くなってしまうケースがあります。もし口臭が気になる場合は、インビザライン治療以外の口腔内の健康状態にも目を向け、歯科医師に相談することが大切です。
気になる口臭を放置すると?インビザライン治療への影響
インビザライン治療中に感じる口臭は、単なる不快なだけでなく、放置するとより深刻な口腔トラブルを引き起こす可能性があります。さらに、矯正治療そのものにも悪影響を及ぼし、計画通りに進まなくなることも考えられます。
このセクションでは、口臭を放置することで生じる具体的なリスクとして、虫歯や歯周病の進行、そして矯正治療の計画にどのような影響が出るのかを詳しく解説します。
虫歯や歯周病のリスクが高まる
口臭の主な原因は、口の中に存在する細菌が食べかすなどを分解する際に発生するガスです。これらの口臭の原因となる細菌の中には、虫歯菌や歯周病菌と共通のものも多く含まれます。インビザラインを装着していると、歯がマウスピースで覆われるため唾液の自浄作用が十分に働きにくくなります。この環境下では、細菌が増殖しやすくなり、虫歯や歯周病が進行しやすい状態になります。
細菌が産生する酸は歯のエナメル質を溶かし、虫歯の発生につながります。また、歯茎に炎症を引き起こすことで歯周病が悪化し、歯茎からの出血や腫れ、さらには歯を支える骨が溶けるといった重篤な状態に進むリスクも高まります。インビザライン治療中は、マウスピースの装着によって口の中が密閉される時間が長いため、普段以上に丁寧な口腔ケアが虫歯や歯周病のリスクを軽減し、口臭予防にもつながります。
矯正治療の計画に影響が出る可能性
インビザライン治療中に虫歯や歯周病が進行してしまうと、矯正治療の計画に大きな影響が出る可能性があります。もし深刻な虫歯や歯周病が見つかった場合、歯や歯茎の健康を優先するため、一時的にインビザライン治療を中断し、先にこれらの疾患の治療を行う必要があります。これは、健康な口腔環境でなければ、インビザラインの効果が十分に発揮されないためです。
治療が中断されると、予定していたアライナーが合わなくなり、新しいアライナーの再製作や、全体の治療計画の見直しが必要になることがあります。その結果、治療期間が延長されたり、追加の費用が発生したりする可能性も出てきます。日々の丁寧な口臭ケアは、口の健康を守るだけでなく、スムーズに理想の歯並びを手に入れるための大切な一歩となるのです。
自宅でできる!毎日の基本の口臭ケア
インビザライン治療中に気になる口臭の主な原因を理解したところで、ここからは、ご自宅で毎日実践できる口臭ケアの具体的な方法をご紹介します。日々の生活に無理なく取り入れられるよう、「歯のケア」「マウスピースのケア」「口内環境のケア」という3つの側面に焦点を当て、それぞれで実践すべき基本かつ重要なセルフケア方法を詳しく見ていきましょう。
これらのケアを習慣にすることが、快適なインビザライン生活を送り、自信を持って治療を進めるための大切な鍵となります。少しの工夫で口臭の不安を解消し、より充実した毎日を過ごしましょう。
【歯のケア】食後の歯磨きと歯間ケアを徹底する
インビザライン治療中の口臭予防において、最も基本となるのが「食後の徹底した歯磨き」です。インビザラインのアライナーは、1日20〜22時間装着することが推奨されています。食事のたびにアライナーを外し、食後に必ず歯を磨いてから再装着するというルールを徹底してください。
このルールを怠り、食べかすが残ったままアライナーを装着してしまうと、歯とアライナーの間に食べかすが閉じ込められ、細菌にとって絶好の繁殖場所となってしまいます。これが口臭や虫歯の直接的な原因となるため、毎食後の丁寧な歯磨きは絶対に欠かせません。
歯ブラシだけでなくフロスや歯間ブラシも使おう
毎日の歯磨きにおいて、通常の歯ブラシだけでは届きにくい場所があることをご存じでしょうか。特に歯と歯の間や、歯と歯茎の境目は、プラーク(歯垢)が最も溜まりやすく、口臭の原因となる細菌が繁殖しやすい場所です。歯ブラシの毛先では届きにくいこれらの部位の汚れを効果的に除去するには、デンタルフロスや歯間ブラシの活用が不可欠になります。
デンタルフロスは、歯と歯の間の狭い隙間の汚れをかき出し、歯間ブラシは、歯の隙間の大きさに合わせて選び、残った食べかすやプラークを物理的に除去します。これらの補助清掃具を併用することで、歯ブラシだけでは落としきれない汚れを徹底的に取り除き、口臭や歯周病のリスクを大幅に減らすことができるのです。ご自身の歯間に合ったサイズのフロスや歯間ブラシを選び、毎日のケアに加えてみてください。
【マウスピースのケア】正しい洗浄と保管方法
インビザライン治療では、毎日長時間マウスピース(アライナー)を口の中に装着します。そのため、アライナー自体を清潔に保つことが、口臭を予防し、快適に治療を進める上で非常に重要です。アライナーの清掃が不十分だと、細菌が繁殖し、不快な臭いの原因となるだけでなく、お口の健康にも悪影響を及ぼす可能性があります。
ここでは、アライナーを清潔に保つための「正しい洗浄方法」と「適切な保管方法」の2つの観点から、具体的な手順をご紹介します。これらのケアを毎日実践することで、アライナーを清潔に保ち、口臭の発生を防ぐことができるでしょう。
基本は水洗い!週に数回は専用の洗浄剤で
アライナーの基本的な洗浄方法は、毎食後にアライナーを外すたびに、指で優しくこすりながら流水で洗い流すことです。これで、アライナーに付着した大きな食べかすや唾液のネバつきを洗い流すことができます。力を入れすぎず、アライナーを傷つけないように注意しながら丁寧に洗いましょう。
さらに効果的に細菌を除去し、口臭を防ぐためには、週に1〜2回程度、マウスピース専用の洗浄剤を使用することをおすすめします。専用の洗浄剤は、目に見えない細菌をしっかりと除菌し、臭いの発生を根本から抑える効果があります。洗浄剤の指示に従って使用し、清潔な状態を保つことで、より安心してアライナーを装着できるでしょう。
やってはいけないNGな洗い方
アライナーを清潔に保つことは大切ですが、誤った方法で洗うと、アライナーを傷つけたり変形させたりしてしまい、治療に悪影響を及ぼす可能性があります。特に注意すべきNGな洗い方がいくつかあります。
一つ目は「歯磨き粉の使用」です。一般的な歯磨き粉には研磨剤が含まれており、これを使用するとアライナーの表面に細かな傷がつき、その傷に細菌や汚れが溜まりやすくなります。二つ目は「熱湯での消毒」です。アライナーは熱に弱く、熱湯に浸すと変形してしまう恐れがあります。変形したアライナーは歯に正しくフィットせず、矯正効果が得られなくなるため注意が必要です。三つ目は「食器用洗剤などの使用」です。食器用洗剤は、アライナーの素材に合わない場合があり、成分が残留して口の中に入る可能性があります。これらのNG行為を避け、正しい方法でアライナーをケアしてください。
保管する際はしっかり乾かすのがポイント
アライナーの清潔を保つためには、洗浄後の「乾燥」も非常に重要なポイントです。洗浄を終えたアライナーを濡れたまま保管ケースに入れてしまうと、湿度が高い環境で細菌が繁殖しやすくなり、不快な臭いの原因となってしまいます。
洗浄後は、清潔なタオルやティッシュでアライナーの水分をしっかりと拭き取るか、通気性の良い場所で自然乾燥させてから保管ケースに入れるようにしましょう。この一手間をかけることで、アライナーをより衛生的に保ち、口臭の発生を効果的に防ぐことができます。
【口内環境のケア】唾液の分泌を促して乾燥を防ぐ
歯やアライナーの直接的なケアに加えて、口内環境そのものを健康に保つことも口臭予防には欠かせません。特に、インビザラインを装着していると、唾液の働きが弱まりやすく、口腔内が乾燥しがちです。唾液には、お口の中を洗い流す自浄作用や、細菌の増殖を抑える抗菌作用など、口臭予防に重要な役割があります。
このセクションでは、唾液の分泌を促し、口腔内の乾燥を防ぐための簡単な方法をご紹介します。誰でもすぐに実践できる「こまめな水分補給」と「唾液腺マッサージ」で、お口の中のうるおいを保ち、口臭の発生を抑えましょう。
こまめな水分補給を心がける
口腔内の乾燥は、口臭の大きな原因の一つです。インビザライン治療中は、アライナーがお口の中を覆うため、唾液が歯の表面に届きにくくなり、特に乾燥しやすい状態になります。そこで、最も簡単で効果的な対策となるのが「こまめな水分補給」です。
水を飲むことで、お口の中を洗い流し、食べかすや細菌の停滞を防ぐことができます。日中に少しずつ水分を摂取し、お口の中を常に潤った状態に保つよう心がけましょう。ただし、アライナーを装着したまま飲んで良いのは「水」だけです。糖分や酸を含むジュース、コーヒー、お茶などをアライナー装着中に飲むと、歯とアライナーの間にそれらが停滞し、虫歯や着色のリスクが非常に高まります。外出時にもマイボトルを持ち歩くなどして、意識的に水分を補給するようにしてください。
唾液腺マッサージも効果的
お口の中の乾燥を防ぎ、口臭を予防するためには、唾液の分泌を促すことが有効です。そこでおすすめなのが「唾液腺マッサージ」です。唾液腺とは唾液が作られる器官のことで、主なものに耳下腺、顎下腺、舌下腺の3つがあります。これらの唾液腺を優しく刺激することで、唾液の分泌を活発にできます。
耳下腺は耳たぶの下あたり、顎下腺は下顎の骨の内側、舌下腺は顎の真下にあるため、それぞれの部位を指で軽く押したり、円を描くようにマッサージしたりしてみてください。特に、口の渇きを感じた時や、食事の前などに数分間行うと効果的です。どこでも手軽にできるマッサージですので、ぜひ毎日の習慣に取り入れてみてください。
【シーン別】仕事中でもできる!簡単な口臭エチケット
インビザライン矯正中の口臭ケアは、自宅での入念なセルフケアが基本ですが、仕事中や外出先など、日中にどのようにケアをすれば良いか悩む方も多いのではないでしょうか。商談や会議、ランチ後の休憩中など、さまざまなビジネスシーンで口臭が気になってしまうと、集中力が途切れてしまったり、自信を持って話せなくなったりすることもありますよね。このセクションでは、忙しい中でもスマートに実践できる、簡単な口臭エチケットをご紹介します。
これからご紹介する対策は、どれも手軽にできて、すぐに実践できるものばかりです。日中のちょっとした工夫で、口臭の不安を解消し、一日中快適に過ごせるようにしていきましょう。
会議や商談の前に:マウスウォッシュで素早くリフレッシュ
重要な会議やプレゼンテーション、あるいは大切な商談を控えている時など、口臭が特に気になる場面は多いものです。そのような時は、マウスウォッシュが非常に効果的な応急処置となります。
携帯に便利な個包装タイプや小さいボトルタイプのマウスウォッシュを常に持ち歩き、会議室に入る前や商談の直前などに、トイレなどでさっと口をゆすぐだけで、気になるニオイを一時的にリフレッシュできます。マウスウォッシュに含まれる殺菌成分が口臭の原因菌を減らし、爽やかな息を取り戻す手助けをしてくれるでしょう。
ただし、マウスウォッシュを選ぶ際には注意が必要です。アルコール成分が含まれている製品は、一時的に爽快感を得られるものの、口の中を乾燥させてしまい、かえって口臭を悪化させる原因となる可能性があります。そのため、会議や商談の前には、アルコールフリーのマウスウォッシュを選ぶことを強くおすすめします。
ランチの後に:携帯用歯ブラシセットでしっかりケア
インビザライン矯正において、食後のケアは口臭予防の非常に重要なポイントです。昼食後に歯磨きをせずにアライナーを再装着してしまうと、食べかすがアライナーと歯の間に挟まったまま長時間放置されることになり、口臭の最大の原因となってしまいます。また、食べかすが原因で虫歯のリスクも高まってしまいます。
そのため、オフィスや外出先でのランチ後には、携帯用歯ブラシセットをカバンや会社のデスクに常備し、食後の歯磨きとアライナーの洗浄を習慣にすることが大切です。化粧室などでランチ後の歯磨きを済ませ、アライナーも流水で軽く洗浄してから再装着することで、口臭の発生を効果的に防ぎ、一日中快適な口内環境を保つことができます。
最近では、コンパクトでおしゃれなデザインの携帯用歯ブラシセットもたくさん販売されています。周囲の目を気にせずケアできるようなお気に入りのアイテムを見つけて、食後のケアを毎日の習慣にしていきましょう。
どうしても歯磨きができない時は?
会食の場や移動中、あるいは急な来客対応など、どうしても歯磨きをする時間が取れない、という状況は誰にでも起こり得ます。このような時でも、「何もしない」という選択肢は避けたいものです。完璧なケアが難しい場合でも、口内環境を少しでも良好に保つための次善策を講じることが、口臭予防には非常に重要になります。
このセクションでは、歯磨きができない緊急時に役立つ、手軽に実践できる応急処置をいくつかご紹介します。
水で口をゆすぐだけでも効果あり
歯磨きができない時の最も手軽で基本的な対策は、水で口をゆすぐことです。食後すぐに、強めにブクブクと口をゆすぐだけでも、歯の表面や歯間に挟まった大きな食べかすを物理的に洗い流すことができます。
食べかすは口臭の原因となる細菌の栄養源となるため、これを減らすだけでも口臭の発生をある程度抑制する効果が期待できます。費用もかからず、場所を選ばずに実践できるため、いざという時の応急処置としてぜひ活用してみてください。
デンタルリンスや口臭ケアスプレーの活用
水で口をゆすぐだけでは物足りない、あるいはもう少し効果を高めたいという場合には、液体歯磨き(デンタルリンス)や口臭ケアスプレーの活用がおすすめです。これらの製品は、歯磨きができない時に使うことで、殺菌成分が口臭の原因となる細菌の増殖を抑える効果が期待できます。
デンタルリンスは、口全体をしっかりゆすぐことで、口腔内の広範囲にわたって洗浄・殺菌効果を発揮します。一方、口臭ケアスプレーは、会議の直前など、より手軽に素早く口臭をカバーしたい場合に便利です。ただし、これらはあくまで応急処置であり、歯磨きの代わりにはならないことを理解しておくことが重要です。帰宅後や時間が取れる際には、必ずしっかりとした歯磨きとアライナーケアを行うようにしましょう。
口臭を悪化させないために気をつけたい生活習慣
これまでの口腔ケアは、主に歯とマウスピース、そして口内の直接的な環境に焦点を当ててきました。しかし、口臭は日々の食生活や生活習慣にも大きく影響されます。ここでは、インビザライン治療中に特に注意すべき生活習慣に目を向け、口臭を悪化させないためのポイントを詳しく見ていきましょう。
口内環境は身体全体の健康状態を映し出す鏡とも言われます。これからご紹介する生活習慣の見直しは、口臭予防だけでなく、全身の健康維持にもつながるため、ぜひ参考にしてみてください。
糖分の多い間食や飲み物に注意
口臭の原因となる細菌の活動を活発にする最大の要因の一つが「糖分」です。アライナーを外している間の間食として、アメやチョコレート、甘いジュースなどを頻繁に摂取すると、口の中に糖分が長く留まりやすくなります。
この糖分は、口内に存在する細菌にとって格好の栄養源となります。細菌が糖分を分解する際に、揮発性硫黄化合物などの口臭物質が生成され、口臭が悪化する原因となります。間食を習慣的に摂る場合は、糖分の少ないナッツ類やチーズ、無糖ヨーグルトなどを選び、食べた後は必ず歯を磨くか、それが難しい場合でも最低限、水で口をゆすぐことを心がけましょう。
特に、インビザライン装着中に糖分の含まれる飲み物を飲むと、アライナーと歯の間に糖分が閉じ込められ、虫歯のリスクが格段に高まるだけでなく、口臭も悪化させます。水分補給は水に限定し、意識的に糖分の摂取量をコントロールすることが大切です。
喫煙は口臭の大きな原因に
喫煙は、口臭にとって非常に深刻な悪影響を及ぼします。タバコに含まれるタールやニコチンは、それ自体が独特の強い臭いを放ち、「タバコ口臭」として周囲にも不快感を与えます。これは、口腔内の粘膜や歯に直接付着し、容易には消えない頑固な臭いです。
さらに、ニコチンには血管を収縮させる作用があり、歯茎の血流が悪化します。これにより、歯周病菌に対する免疫力が低下し、歯周病のリスクを高めます。歯周病が進行すると、歯茎からの出血や膿が発生し、それがまた強い口臭の原因となります。
加えて、喫煙は唾液の分泌を抑制し、口腔内を乾燥させます。インビザライン装着中は唾液の循環が元々妨げられがちですが、喫煙によってその状態がさらに悪化し、細菌が繁殖しやすい環境を作り出します。矯正治療をきっかけに禁煙を検討することは、口臭予防だけでなく、歯の健康維持、ひいては全身の健康にとっても大きなメリットがあると言えるでしょう。
セルフケアで改善しない…そんな時は歯科医院に相談を
これまでご紹介してきたセルフケアを熱心に実践しているにもかかわらず、なかなか口臭が改善されない場合もあるかもしれません。そのような時は、ご自身だけで悩みを抱え込まず、かかりつけの歯科医師に相談することが最も大切です。
歯科医師は、専門的な知識と経験に基づいて口臭の原因を特定し、一人ひとりに合った適切な指導や治療法を提案してくれます。問題解決への一番の近道は、専門家の力を借りることと言えるでしょう。
定期検診でプロによるクリーニングを受けよう
日々の丁寧な歯磨きやマウスピースのケアも非常に重要ですが、セルフケアだけでは完全に除去できない汚れがあります。特に、歯の表面に硬くこびりついたプラーク(歯垢)が石灰化した「歯石」は、細菌の温床となり、強い口臭の大きな原因となります。
歯科医院で定期的に行われるプロフェッショナルクリーニング(PMTC)では、歯科衛生士が専門の器具を使って、歯石や普段の歯磨きでは落としきれない汚れを徹底的に除去します。これにより、口臭の原因となる細菌を根本から減らし、口腔内を清潔な状態に保つことができます。
また、定期検診は、口臭予防だけでなく、虫歯や歯周病の早期発見・早期治療にもつながります。インビザライン矯正中は特に口腔内の環境が変化しやすいため、定期的なプロフェッショナルケアは、快適な矯正治療を継続する上で欠かせない要素と言えるでしょう。
口臭の原因が矯正治療以外にある場合も
口臭の原因は、必ずしもインビザライン治療や口腔内の問題だけにあるとは限りません。中には、全身的な健康状態が口臭として現れるケースもあります。例えば、副鼻腔炎(蓄膿症)などの耳鼻咽喉科系の疾患や、逆流性食道炎といった消化器系の問題、さらには糖尿病などの内科疾患が口臭を引き起こす可能性も考えられます。
もし、歯科医院での診察で虫歯や歯周病、アライナーの不具合など口腔内に明らかな原因が見当たらない場合は、歯科医師から内科や耳鼻咽喉科など、他の診療科への受診を勧められることがあります。これは、口臭の根本的な原因が口腔外にある可能性を探るためです。
ご自身の口臭が気になる場合は、まずは歯科医院に相談し、専門的な診断を受けることが大切です。必要に応じて、他の専門医とも連携しながら、多角的な視点から原因を特定し、適切な治療へとつなげることが、口臭の悩み解消に繋がります。
まとめ:正しいケアで口臭の不安をなくし、快適な矯正ライフを
インビザライン矯正中の口臭は、多くの方が経験するお悩みです。しかし、この口臭は、日々の適切なケアと生活習慣の見直しによって十分に予防し、改善できるものです。
本記事でご紹介したように、口臭の主な原因は、アライナー装着による唾液の循環不足、アライナーや歯に残った汚れ、そして虫歯や歯周病といった口腔トラブルです。これらの原因に対し、毎日の丁寧な歯磨きと歯間ケア、アライナーの正しい洗浄と保管、そして口腔内を乾燥させないための水分補給や唾液腺マッサージが非常に重要となります。
また、仕事中など外出先でも実践できるマウスウォッシュの活用や携帯用歯ブラシセットの常備、さらには糖分の摂取を控える、禁煙するといった生活習慣の見直しも、口臭を根本から解決するためには欠かせません。もしセルフケアだけでは改善が見られない場合は、迷わず歯科医院を受診し、プロフェッショナルクリーニングを受けたり、口臭の原因を特定してもらったりすることが大切です。
正しい知識と日々の実践を通して口臭の不安を解消し、自信を持ってインビザライン治療を続け、理想の美しい歯並びと健康的な笑顔を手に入れましょう。
少しでも参考になれば幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございます。
監修者
高橋 衛 | Takahashi mamoru
岩手医科大学歯学部卒業後、岩手医科大学歯学部口腔外科第二講座入局し、
医療法人 高橋衛歯科医院設立 理事長就任、MAMO IMPLANT CLINIC MALIOS 開設
【所属】
・日本歯科医師会
・岩手県歯科医師会
・盛岡市歯科医師会
・歯科医師臨床研修指導歯科医
・岩手県保険医協会
・日本口腔外科学会
・日本口腔インプラント学会
・EUROPEAN ASSOCIATION FOR OSSEOINTEGRATION
・AMERICAN ACADEMY PERIODONTOLOGY
・岩手医科大学歯学会
・デンタルコンセプト21 会員
・日本歯科東洋医学会
・JIADS Club 会員
・P.G.I Club 会員
・スピード矯正研究会 会員
・床矯正研究会 会員
・近代口腔科学研究会 会員
【略歴】
・岩手医科大学歯学部 卒業
・岩手医科大学歯学部口腔外科第二講座 入局
・「高橋衛歯科医院」 開業
・「MAMO IMPLANT CLINIC MALIOS」 開業
岩手県盛岡市の歯医者・歯科
『高橋衛歯科医院』
住所:岩手県盛岡市北天昌寺町7−10
TEL:019-645-6969

